腸管出血性大腸菌感染症とは
腸管出血性大腸菌(O-157)とは、病原性大腸菌で毒力の強いベロ毒素を産生する大腸菌の一種です。
大腸粘膜に付着し増殖した腸管出血性大腸菌が、ベロ毒素(志賀毒素)を産生し、その毒素が大腸粘膜を障害することにより、血性の下痢を引き起こします。
特に、乳幼児や小児、高齢者に感染してしまうと、抵抗力が弱いため、腎機能や神経学的障害などの後遺症を引き起こす可能性の極めて高い溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症を併発してしまうこともあるので注意が必要です。
腸管出血性大腸菌感染症の原因
腸管出血性大腸菌(O-157など)に汚染された食べ物などの摂取が原因となります。
ウシは健康な状態でも保菌していることがあるため、生レバーや加熱不十分な牛肉から感染することが多くみられます。
また、食中毒が多発する夏季は、感染する確率が高くなるが、気温の低い季節でも感染しているので注意は必要である。
特に夏場は、小児が発症するケースが多い。
「菌が数個」だけ口から侵入しても感染が成立することもあるほど感染力が強いため、保育所や保養所での集団発生の報告があります。
少数の細菌数で感染が成立しやすいため、家族の1人が感染してしまうと二次感染の恐れがあり要注意です。
腸管出血性大腸菌感染症の潜伏期間は4日ー14日と比較的長期間ですが、多くは3日-5日です。
潜伏期間は無症状であることが多いため、その間に他者にうつしてしまう可能性があります。
腸管出血性大腸菌感染症の症状
まずは風邪のような、全身の倦怠感から始まります。24時間以内に、嘔吐や下痢などの消化器症状が出現します。
その後、血性の下痢と右下腹部の激しい痛みが襲います。
これは、ベロ毒素によって大腸の粘膜が傷つけられて起こる症状です。
さらに重症化してしまうと、命にかかわる重篤な合併症である、溶血性尿毒症症候群や脳症を引き起こすこともあります。
腸管出血性大腸菌感染症の検査方法
確定診断は便を培養し、分離された菌がベロ毒素を産生するタイプであることを証明することによって行います。
下痢が始まってから5日以上経過すると、便からの菌検出の可能性が低くなります。
そのため場合によっては大腸カメラ(内視鏡検査)を行って、便汁を採取することもあります。そして大腸カメラでの所見は特徴的で、確定診断の契機になることもあります。
下痢が長引いたり、血便が出ていたりする場合には、溶血性尿毒症症候群が起こっている可能性もあるため、尿検査や血液検査で腎機能、血尿の有無もチェックします。
腸管出血性大腸菌感染症の治療
重要なのは重篤な合併症の予防と、合併症の早期発見です。
基本の治療は、一般的な下痢の治療と同様に、安静、水分補給、消化しやすい食事の摂取などです。
下痢止め薬や痛み止め薬の中には、毒素が体外に排出されにくくするものもあるため、薬は自分の判断で服用しないようにし、必ず医師の診察を受けましょう。
抗菌剤を使って治療することも有効ですが、医師とよく相談して対応を決めましょう。