機能性ディスペプシアとは
機能性ディスペプシアとは、慢性的に不快な上腹部症状が続いているにもかかわらず、症状の原因となる異常が内視鏡検査(胃カメラ)や血液検査、エコー検査などでは見つからない病気です。
日本で機能性ディスペプシアが正式な診断名として認められたのは、2013年のこと。
比較的新しい疾患の概念といえます。 これまでの日本の医療は、腹部でいえば、胃がんや胃潰瘍に代表されるような、生命維持に直結する病気にのみ対応し、注力してきました。機能性ディスペプシアのような機能性疾患による、患者さまの生活の質の低下(QOL低下)までは対応する余裕がなかったのかもしれません。
機能性ディスペプシアの原因
機能性ディスペプシアは前述の通り、症状の原因となる異常が見つからない事が特徴ですが、主に2つの原因が考えられています。
- 胃のはたらきの異常を症状として感じる場合(胃の運動機能障害)
- 普通の胃のはたらきを敏感に感じて症状が出る場合(内臓の知覚過敏)
②は患者さまがストレスなどによりさまざまな刺激に対して敏感となっていることによって起こります。
機能性ディスペプシアの症状
FDは、症状により大きく2つのタイプに分けられます。
食後愁訴症候群
(PDS:postprandial distress syndrome)
「食後の胃のもたれ感」、「早期満腹感」
心窩部痛症候群
(EPS:epigastric pain syndrome)
「みぞおちの痛み」、「みぞおちの焼ける感じ」
胃の「運動不全」により、胃が十分に拡がらず(適応性弛緩不全)、食べ物が食べられない、十二指腸へ食べ物を送ることができずに、食後のもたれを感じることもあります。
胃が様々な刺激に対して過敏になる「知覚過敏」の状態になっていると、少量の食べ物が胃に入っただけで胃の内圧が上がり、早期飽満感を起こすこともあります。
また胃酸や食べ物の刺激によって、痛みや灼熱感が起こります。 2つのタイプとも、その根本の原因のひとつはストレスです。ストレスにより自律神経のバランスが崩れることで、症状を引き起こすのです。なかにはPDSとEPSの両タイプの症状がでる人もいます。
機能性ディスペプシアの検査方法
胃がん、胃潰瘍・十二指腸潰瘍などの疾患の可能性を除外するための胃の内視鏡検査、ピロリ菌感染の検査、必要に応じて血液検査や超音波検査、腹部CT検査などを行います。
それでも症状が軽減・消失しない場合は「機能性ディスペプシア」として内服加療を行います。
機能性ディスペプシアの治療法
機能性ディスペプシアの治療も原因に合わせて2通りの方法が考えられます。 一つは胃のはたらきの異常を改善する方法、 もう一つは敏感になっている状態を改善する方法です。
胃のはたらきの異常を引き起こす刺激は胃の動きと胃酸が代表的です。 胃の動きを改善する消化管運動機能改善薬と、胃酸が分泌を抑える酸分泌抑制薬が第一選択薬として推奨されています。
一方、脳が敏感な状態となっていることを抑えるのは難しいのですが、一部の抗不安薬や抗うつ薬にFD症状の改善効果があることが示されています。また、漢方薬のなかには胃の動きを改善したり食欲を増す作用などによって機能性ディスペプシアを改善するものがあることが示されています。
しかしながら、これらの方法には十分な裏づけがあるとはいえないのが現状です。 いずれの薬剤もその効果には個人差があり、服用した患者さまの半数ぐらいにしか効果があらわれないといわれています。
患者さまと医師とで相談しながら、どのお薬が合うのかを試したり、ときには作用の異なるお薬を併用するなどして治療を行います。 また、H. pylori 陽性の場合には除菌治療を行うことで、機能性ディスペプシアにおける諸症状を有意に改善させることが示されています。