脂肪肝・アルコール性肝障害とは
脂肪肝とは肝臓の細胞に脂肪が蓄積することで肝臓の機能が障害される病態のことをいいます。
男性に高頻度に発症する疾患ですが、女性では50歳以上の方で増加しています。
脂肪肝の発症原因はアルコールの飲み過ぎか、B型肝炎やC型肝炎などのウイルス性肝炎が大半を占めると考えられていました。 しかし最近になり、アルコールをそれほど飲まず肝炎ウイルスにも感染していない方の中にも、脂肪肝が発症することがわかりました。
その多くは、糖尿病や脂質異常症、肥満(メタボリックシンドローム)に伴うもので非アルコール性脂肪肝(NASH)と呼ばれます。 アルコール性肝障害はアルコールを常習的に飲んでいる方に発症する疾患です。
日頃から飲酒量の多い方は、外見は痩せていても、肝臓に脂肪が蓄積され、炎症を起こすことがあります。
これらの患者さまが大量に飲酒後には、重症のアルコール性肝障害を発症し、命に関わる重篤な状態になることがあります。
また、治療せず放置すると、肝硬変や肝がんに進展していく場合もあります。
脂肪肝・アルコール性肝障害の
原因
脂肪肝発症の原因としては過度の飲酒や過栄養による肥満・糖尿病が原因となる場合が多く見られます。その他に高カロリー輸液、飢え、薬剤やウイルスによっても発症することがあります。
食事で摂った脂質は、小腸で吸収され肝臓で脂肪酸に分解されます。
しかし、脂質の過剰摂取や運動不足の場合には、使いきれなかった脂肪酸が中性脂肪として肝臓に蓄えられていきます。また、お酒の飲み過ぎでも肝臓に中性脂肪が溜まります。これは、アルコールが肝臓で分解される時、中性脂肪が一緒に合成されるためです。また肥満になると、肝臓での脂肪酸の燃焼が悪くなるので、肝臓に中性脂肪が溜まります。
脂肪肝・アルコール性肝障害の
症状
脂肪肝には痛みなどの自覚症状は特にありません。ただ、全身を巡る血液が脂肪分を多く含むことで血流が悪くなり、全身に酸素や栄養分が補給されなくなります。そのため疲労感、肩がこる、頭がボーとするなどの症状が出ることがあります。
また稀に肝臓の腫大により腹部の膨満感や右脇腹が叩かれたような痛みを自覚する場合もあります。 脂肪肝は心筋梗塞や狭心症などの心疾患、生活習慣病の原因になることもあります。しっかりと根治を目指して治療を行うことが大切になります。軽症なアルコール性脂肪肝は目立った症状が出ないことが多く、お腹が張る、疲れやすい、食欲がないなどの自覚症状があったとしても見過ごされることがあります。
進行しアルコール性肝炎になると、食欲不振、倦怠感、発熱、右上腹部の鈍痛、黄だんなどが現れるようになります。
さらに重症になると、禁酒した後も肝臓の腫れが続き、腎不全、消化管出血、肝性脳症といった重い合併症を併発することがあります。
脂肪肝・アルコール性肝障害の
検査方法
超音波(エコー)、CTなどの画像解析と一般的な検診による血液検査とを合わせて診断します。 画像検査では脂肪の部分が白っぽく輝いて見えます。 血液検査ではALT(GPT)、AST(GOT)の値が50~100前後に上昇する場合が多く、y-GTPやコリンエステラーゼなども高くなります。
ただし血液検査で異常が見られなくても画像検査によって脂肪肝が認められることもあります。
脂肪肝・アルコール性肝障害の
治療法
肥満や糖尿病に伴う脂肪肝では主に食事療法と運動療法が基本になります。アルコールの過剰摂取による脂肪肝でも食事療法、断酒することが大切になります。食事療法・運動療法を行っても効果が見られないときは補助的に薬物療法を行います。
あくまでも補助的であり、患者さまの病態に応じて処方される薬が選択されます。食事療法や運動療法を含めた生活習慣の改善と共に、糖尿病改善薬や脂質異常症改善薬などを用いて治療を行います。
規則正しい時間に一日3食(朝食・昼食・夜食)しっかりと食事すること、一気に飲み込まずにしっかりと咀嚼してから飲み込むこと、間食をしないことや入眠前にカロリーの高い食事をしないことなどの食習慣の改善が大切です。
運動療法では肥満・呼吸器・循環器系の疾患の合併症を考慮して歩行などの軽度な運動から開始し、徐々に運動量を増やしていくことが推奨されています。 アルコール性肝障害では、原因が飲酒であることから、禁酒が原則となります。
アルコール依存症がある場合は専門的な治療が必要です。 禁酒により、約30%の方の肝臓は正常化します。
しかし約10%は悪化し、肝硬変へ進行してしまいます。食事や栄養状態が十分でない場合には、カロリー、タンパク質、ビタミンを十分に摂取することが重要です。