バレット食道とは
慢性的な胃食道逆流の結果、胃と食道のつなぎ目から食道下部にかけての食道粘膜(扁平上皮といいます)が胃の粘膜(円柱上皮といいます)に置き換わった状態をバレット食道と呼びます。
バレット食道自体は生命に直接関わることはありませんが、食道癌の発生母地となる点で注意が必要な疾患です。
バレット食道の方は食道癌の発症リスクが高い(健常者の30-60倍)と報告されています。
バレット食道に発生する癌は、日本で一般的な食道扁平上皮癌とは異なり「食道腺癌」という特殊なタイプの癌で、「バレット食道癌」とも呼ばれます。
胃食道逆流→逆流性食道炎→バレット食道→ 異形成(dysplasia)→食道腺癌(バレット食道癌)という流れで癌化します。
欧米では逆流性食道炎の増加に引き続いて、バレット食道、バレット食道癌も著明に増加してきているとの報告があります。日本でも食生活の欧米化などにより逆流性食道炎が増加していますが、今後バレット食道も同じように増加していくことが懸念されています。
バレット食道の原因
バレット食道の主な原因は逆流性食道炎です。
胃酸を含む胃内容物が食道に逆流すると逆流性食道炎になり、食道の粘膜に「びらん」という粘膜のただれや、「潰瘍」という粘膜の傷が深くえぐれた様な病変が発生します。その治癒・修復の過程で、食道の粘膜が本来の扁平上皮ではなく円柱上皮に置き換わった状態を『バレット食道』と呼びます。
バレット食道の症状
バレット食道の患者さまでは、逆流性食道炎と同じように胸やけや呑酸(酸っぱいものが上がる)などの症状がみられることもありますが、無症状の方も少なくありません。
逆流性食道炎についてはこのような症状があります。
- 胸やけ
- 酸っぱいものが上がる(呑酸)
- 苦い水が上がる
- げっぷ
- みぞおちの違和感や痛み
- 胸の違和感
- 喉や口の中の違和感
- ものが飲み込みにくい
バレット食道の検査方法
逆流性食道炎は症状や問診からある程度診断はつくものと考えられますが、その患者さまにバレット食道が発生しているかどうかについては内視鏡検査が必要です。
バレット食道の早期発見のためには、特に胸やけなどの逆流性食道炎の症状のある方はまず内視鏡検査を受けていただくこと、内視鏡検査でバレット食道を診断すること、そしてバレット食道と診断された場合は定期的に内視鏡検査を受けることが大切です。
バレット食道腺がんに対しては胃がんや食道扁平上皮がんに準じて治療を行います。がんが粘膜内にとどまる状態で早期発見できれば内視鏡での治療が可能です。そのためバレット食道と診断された場合、過度に心配するのではなく定期的に胃カメラで経過観察を行うことが大切です。
当院の内視鏡検査
当院の内視鏡検査は内視鏡専門医である小田木院長を筆頭に、経験豊かな内視鏡専門医達が担当します。
豊富な実績から蓄積された技術と知識を用いて、患者さまに良質な内視鏡検査を提供します。
女性医師による検査も可能ですので、ご希望の方はお気軽にお申し付けください。
バレット食道の治療法
バレット食道そのものに対する治療は現時点では有効なものがなく、随伴する逆流性食道炎の症状を抑えるために生活習慣の改善と胃酸の分泌を抑制する内服薬を使用します。
脂肪分やタンパク質の摂りすぎのほか、甘いもの、香辛料を多く含む刺激の強いもの、酸味の強い果物なども胸焼け症状を悪化させる可能性がありますので摂りすぎには注意が必要です。
早食いをしないように注意し、一度に摂る食事量についても腹八分目の適量を心がける必要があります。
コーヒーや緑茶などに含まれるカフェインは胃酸の分泌を増やすといわれ、またアルコールは胃酸の分泌を増やすだけでなく、噴門部の筋肉をゆるめる作用があり、摂りすぎは症状の悪化につながりやすいといわれています。
また、食べた後すぐに横になると物理的に胃の中身の多くが逆流してしまうため、食事から就寝まではある程度の時間をあける必要があります。
以上の様な食生活の改善とともに、適度な運動による肥満の解消、背筋を伸ばした姿勢を心がけることが望まれます。しかし、生活習慣の改善だけでは症状を完全になくすのは難しく、多くの方で生活習慣の改善とあわせて薬物治療が必要となります。薬物治療は胃酸の分泌を抑える薬や、消化管の運動を促進させる薬を使用します。